
ローズウッド (Rosewood) は南米に自生するクスノキ科の樹木である。フランス語名であるボアドローズ (Bois de Rose) で呼ばれることも多い。心材のチップを水蒸気蒸留することにより精油を得ることができ、これが香料やアロマテラピーに利用されている。ローズウッドの学名はAniba rosaeodora Duckeとされることが多いが、実際には単一種の植物ではなく、数種類の樹木を指しているとする分類もある。
なお、紫檀の仲間もローズウッドと呼ばれることがあるが、紫檀はマメ科の植物であり精油を得る用途には用いない。
利用ローズウッドの中で一番最初に利用されたのはギアナに生育していたものである。この樹木の材質はマホガニーに似ており、重く硬い。そして精油を含むため、バラの花のような香りがする。そのためフランスで珍重され、精油を得るほかに家具や日用品を作る材木としても利用された。
ギアナからの輸出はカイエンヌから行なわれたため、ローズウッドの精油はカイエンヌ油とも呼ばれていた。ギアナのローズウッドの精油の主成分は (R)-リナロールで9割近くを占めている。(R)-リナロールの慣用名であるリカレオール (Licareol) は、ローズウッドをギアナで Licari Kanali と呼んでいたことに由来するとされる。ただし Licari Kanali はローズウッドとは別の植物 (Licaria cannella) としている分類もあり、誤解による命名である可能性もある。
ギアナに続いてローズウッドの生産が始まったのがブラジルのマウエス近郊であった。ブラジルのローズウッドはおそらくはギアナのものとは種が異なっており、得られた精油の品質も異なっていた。そのため、市場の獲得は思うように進まなかった。しかし、1920年代にはギアナのローズウッドの乱獲が進んで資源が枯渇し、ギアナ産のローズウッドはほとんど生産されなくなってしまった。そのためブラジルのローズウッドが市場に受け入れられるようになっていった。
ブラジルのローズウッドの精油の主成分もリナロールではあるが、ほぼラセミ体である。しかし、単独の木から水蒸気蒸留で得た精油のリナロールは光学活性体であり、木によってどちらの鏡像異性体が過剰かが異なっていたとの報告もある。
1960年代前半まではローズウッドの精油はリナロールの供給源として重要であった。1960年代前半の最盛期には年間500トンの精油(木材に換算すると5万トン)が生産されていた。しかし1960年代後半にリナロールの合成法が確立するとその生産は急激に衰退した。現在のローズウッドの主な生産地はブラジルとパラグアイであり、高級香水やアロマテラピー向けに生産が行なわれている。